詩人・渋田耕一氏死去
詩人の渋田耕一氏が12月9日に亡くなられた。
今日の午前中に詩人の河津聖恵さんより、電話を貰ってそれを知る。
氏は、今年の5月に第4詩集『欠けた円周』を刊行されている。
この詩集の原稿をいただきに横浜のご自宅にうかがったときには、すでに闘病中で、入退院を繰り返されていた。担当医師からは、「1年の命の保証はないと言われています」と淡々と話された。ほとんど横になったきりの生活であるとも言われた。
私の前で正座をされ、背筋をのばし「ぼくは前衛詩人です」と、おっしゃった。
前衛的であることの輝かしい誇りをもっておられる方であるのだということが、よく分った。
『欠けた円周』は土井晩翠賞の対象ともなったが、惜しくも受賞することが出来なかった。
ご本人の落胆を思うと、それ以後、病気のことが気になりながら、連絡をすることが少し辛く思われ、電話をすることもしていなかった。そんな時の訃報だった。
なんとも残念でならない。
「あわよくばもう4,5年生き延びて、次の詩集をなどとおこがましい夢を見ている」と「あとがき」に書かれていたように、もう少し生きていていただきたかったと思う。
氏の魂のやすらかならんことを。 (山岡喜美子・記)